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「もしオレが死んだらどうする?」

そんなことを笑って言うのだ、この人は。
枕に埋めていた顔を上げて、ぼんやりとしたままサクラは答えた。

「…とりあえずお葬式に行く、かな?」
「そういうんじゃなくて」

肩まで伸びたピンクの髪を指で遊びながら、カカシは少し困ったように眼を細める。
その顔がひどく情けなくて、愛らしい。

「じゃあ、先生は私が死んだらどうするの?」

言った瞬間、しまった、と思った。
今の自分たちにとって「死」というものはそれ程遠いものではなく、こんなにも身近なもの。
先に言い出したのがカカシだったにせよ、「もし」で済まされるようなものではないのだ。
「ごめん、今のナシ」と言おうとして、先ほど髪を遊んでいた指が唇に触れ、それを止められる。
そのまま、サクラがれろりと咥えるように舐めると、 その行動が予想外だったのか、カカシは一瞬だけ驚き、満足そうな顔で笑んだ。

「サクラはオレより先に死んじゃだめだよ」
「ん」

サクラが頷くとカカシはサクラの口から指を抜き、自分の唇を押し当てた。
薄く開いたそこに躊躇うことなく舌を差し入れ絡める。
サクラはその柔らかな刺激をうっとりと享受しながら、カカシの肩に腕を回した。

「先に死んだら、あの世で待っててくれる?」
「あの世なんて信じてるの、サクラは」
「意外とロマンチストなのよ、私」

首元をわずかに噛まれ、ゾクリと体が疼く。
背中を撫でる指が、体の奥からジリジリとした熱を生む。

「それか私の息子として生まれ変わる、とか」
「息子?サクラと誰の子?」
「先生がいなくなったら他の人と結婚くらいするわよ。 それとも一生独り身でいろっていうの?」
「いや…そうは言わないけど…うわあ、でも嫌だな、それ」

例え話に本気で項垂れてしまったカカシを見て、サクラは笑った。
しょんぼりとしている目元に優しくキスをし、お世辞にも豊満とはいえない胸にカカシの頭を抱き寄せる。

「じゃあ、やっぱりあっちで待っててよ。そして私が死んだら一緒に生まれ変わるの。今度は同じ年で、一緒に遊んで、一緒に勉強して、一緒に大きくなって、ずっとずっと一緒。どう?中々いい案だと思わない?」
「…うん、それはいいかも」
「だから、大丈夫」

何が、とは言わない。
それでもカカシにはわかったようで、 くつくつと喉の奥で小さく笑い「そうだな」と小さなサクラの身体をきつくきつく抱きしめた。
ピタリとくっついた肌から、じんわりと心地よさが広がっていく。

「先生、大好き」

この暖かさを手放す日がくるなんて、今のサクラには考えられなかった。

 

 

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(2008.11.14)

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