Under the moon light



アタシももう子供じゃないんだから、どんなに高く飛んだって、どんなに手を伸ばしたって、月を掴めるわけないってことくらいわかってる。
どれだけ祈っても叶わない願いだってある。
だから、きっとアタシにとってのあんたも、あんたにとってのアタシもそんなもんなんだろう。

 

 

 

U n d e r  t h e  m o o n  l i g h t
月明かりの下で

 

 

 

呼び出された公園に一人、見慣れた――アタシを呼び出した男が立っている。

「こんな寒い中呼び出すなんてどーゆー神経してんのよ、アンタ」
「スンマセン」
「あと一年早く生まれれば、とか思ってる?」
「……思ってる」
「バカみたい」

”たら”とか”れば”なんて言葉は、叶うわけのない願いにどうしようも出来ない自分を慰めるだけの言い訳でしかないのに。
まるで月をねだる子供だ。
どんなに高く飛べたって、どんなに腕が長くたって、たとえ届いたとしてもあれは手に掴めるほどの大きさじゃないというのに。
たった一年。されど一年。
アタシたちの年の差は埋めようがない。

「どう足掻いてももうさよならよ」
「知ってる」
「じゃあ、いい」
「うん」

何が”うん”なのかわからなかったけどとりあえずされるがままに。
角張った骨に、硬い筋肉。
アタシを抱き締める腕も力強い。
抱き締められるのは嫌いじゃない。
だってあたたかいもの。
少し息苦しく思いながらも胸に顔をうずめると、流川独特の匂いがした。
そのぬくもりと匂いが心地よくて目を閉じると、抱き締められた腕に力が入れられ、息苦しさが増した。
お返しにそのまま抱き締め返してみたらバラバラだったパズルのピースみたいに、アタシの体と流川の体が綺麗に繋がった――ような気がした。
ずっとこのままならよかったのに、と。
流川もそう思ってくれると嬉しい。

 

 

バカみたいだ。
本当に今更。
アタシも女だってことに気づいた。

 

 

 

 

 

(日付不明)だいぶ古い

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