※グッナイ、ハニーの平行世界です。
※阿部が我慢しなかったバージョンです。

 

 

 

 

 

 

 

 

グッナイ、ハニー?

 

いつもころころと変わる表情が、こうして大人しくしているのはどこか妙な感じだ。
大きくて、クリクリとした瞳がオレを見ないまま閉じていて。
伏せられたままのまつげは、普段よりも長く見える。
つるりとした肌。すこし丸い鼻。ふっくらとした唇。
正直、彼女だからとか、そういう欲目一切抜きでも篠岡は可愛いと思う。
こんなところで寝ていて寒くないんだろうか。
いや、寒いから丸くなってるのか?
こんな格好で寝てると体痛くなりそうだけどな。
けれどこうやって丸くなって眠る姿すらも可愛く見える。
普段こんな風に篠岡の顔を凝視する事なんてないせいだろうか。
今まで毎日顔を合わせているはずなのに、見ていて全く飽きる事がない。
ただじぃっと、まるでまつげを一本一本数えるかのように見続けた。
起こさないように。
最初はそう思っていたのに、気持ちが高ぶり、つい、そっと頬を手のひらで撫でた。
寝てる姿が可愛い、そう思うのも事実なのに、 それと同時にこの目が自分を見ていない事がとても寂しい。
だってまだオレは「おかえり」の一言も聞いていない。

「篠岡」

頬に触れた手をそのまま滑らせ髪をかき上げた。
反応がないのをいい事に、篠岡をまたいでソファに片足を乗せると、 さっきまであった、篠岡のまつげが作る影が、自分の影と同化して消えた。

「千代」

今度は耳元に口を寄せ名前を呼ぶ。
キスをしようか。
そう思ったが、ほとんど閉じられた口に触れるだけのキスなんて物足りない。
これなら起きるかもしれない、と思い、きゅ、と軽く鼻をつまんだ。
一瞬だけ篠岡は眉をしかめたが、ふぁ、と息を吸うために、閉じられていた口が開く。
そこを狙って、オレは唇を重ねた。
わずかに開いた隙間から、舌を入れる。
れろ、と上を舐めたところで、ようやく篠岡の目が開いた。
けれどそんな事はお構い無しで、舌を擦り合わせる。
篠岡はまだ覚醒しきってないようで、自分から絡めてくるような事はしない。
そのまま何度か角度を変えて、濡れた感触を味わう。
ちゅう、と軽く吸い上げたところで思いっきり肩を押された。
唇を離すと、それを惜しむように唾液が糸を引いた。

「え?な、に?」
「ただいま。そしておはよう」
「…おかえり」

「ごめん、寝ちゃってた」なんて、まるでさっきのキスがなかったかのよう。
起き抜けの少しぼけーっとした顔に、また奇妙な愛しさが沸いて、二度目のキスをした。
鼻に、頬に、まぶたに、額に、そして唇に。
背中に手を回して、舌を絡めた。
さっきと同じように、上顎、ざらっとした表面、柔らかな裏側を舐める。
違うのは、篠岡も同じ反応を返してくれる事だ。
そのままシャツをたくし上げ、胸に顔をうずめる。
ブラのホックに手をかけたところで、声をかけられた。

「私まだ眠いんだけど」
「だめ」
「えー…」

篠岡の返事は無視して、あらわになった胸をやんわりと揉んだ。
ふにふに、と触りながら首筋に唇を吸い付ける。
うっすらと赤く残る跡。
朝になって気付いたら怒られるかもしれない。
しかしそうしている間にもまた篠岡の目は閉じようとしている。

「寝んなって」
「ん」

薄い反応に多少の苛立ちを感じ、剥きになって胸を弄った。
触りながらちゅう、と吸い、軽く噛むと、わずかにびくんと篠岡の体が弾む。

「明日朝飯作んなくていーから」

篠岡は少し不貞腐れた顔をしていたけれど、 首に回された腕がそのまま答えだと思ってよさそうだ。
とりあえず今夜は散々泣かせて、明日の朝飯はオレが作ってみようと思う。

 

(07.10.10)

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